長年、変形性膝関節症の痛みに悩まされ、ヒアルロン酸注射もほとんど効かなくなっていた。医師からは人工関節の手術を勧められたが、自分の骨を削ることにどうしても踏み切れずにいた。そんな時、インターネットで知ったのが、自分の脂肪から採った幹細胞で膝を治療するという再生医療だった。希望の光が見えた気がしたが、クリニックに問い合わせて提示された費用は、百数十万円。年金暮らしの身には、あまりにも重い金額だった。家族にも相談したが、「そんな怪しい治療に大金を使うなんて」と猛反対された。何度も諦めようと思った。しかし、このまま痛みを我慢し続け、いずれは歩けなくなって家族に迷惑をかける未来を想像すると、どうしても最後の望みを捨てきれなかった。私は、いくつかのクリニックでカウンセリングを受けた。安いところもあったが、説明が早口で質問しづらい雰囲気だった。最終的に選んだのは、費用は少し高めだったが、私の膝のレントゲンを丁寧に見ながら、再生医療の可能性と限界、そして「この治療で痛みがゼロになる保証はない」というリスクまで正直に話してくれた先生のいるクリニックだった。私は、なけなしの貯金を取り崩すことを決意した。治療当日、腹部から脂肪を採り、その数週間後に培養された幹細胞を膝に注射した。すぐに痛みが消えたわけではない。しかし、言われた通りにリハビリを続けるうち、数ヶ月が経つ頃には、杖なしで歩ける時間が増えていることに気づいた。今では、諦めていた近所のスーパーへの買い物にも、自分の足で行けるようになった。あの時の百万円は、私にとって単なる治療費ではない。痛みから解放された穏やかな日常と、もう一度自分の足で歩けるという自信を取り戻すための、未来への投資だったのだと、今、心から思っている。