膝の再生医療と保険適用、例外を知る
「膝の再生医療に、健康保険は使えないの?」という疑問は、多くの患者さんが抱く切実なものです。結論から言うと、現在、変形性膝関節症など加齢による膝の痛みに対して行われているPRP療法や幹細胞治療のほとんどは、保険が適用されない「自由診療」であり、費用は全額自己負担となります。これは、これらの治療法が、まだ国が定める「有効性が科学的に確立された標準治療」としての承認を得ていないためです.しかし、例外的に、特定の条件下で保険適用となる膝の再生医療が一つだけ存在します。それが「自家培養軟骨移植術」です。この治療が対象とするのは、主にスポーツや事故などのケガによって軟骨が大きく欠けてしまった「外傷性軟骨欠損症」や、骨の一部が壊死してしまう「離断性骨軟骨炎」です。一般的な中高年の変形性膝関節症は対象外となります。この治療では、まず患者さん自身の健康な軟骨の一部を少量採取し、それを専門施設で約4週間かけて培養し、新しい軟骨組織を作り出します。そして、再び手術を行い、その培養した軟骨を欠損部分に移植するというものです。この自家培養軟骨は、国の厳しい審査を経て「再生医療等製品」として承認されており、定められた基準を満たす医療機関で、対象疾患の患者さんが治療を受ける場合に限り、健康保険が適用されます。保険が適用されても、手術や入院が必要なため、高額療養費制度を利用しても自己負担額は数十万円になることが一般的です。このように、膝の再生医療における保険適用の道は非常に狭き門であり、ほとんどの患者さんにとっては自由診療という現実を理解しておく必要があります。