現在、自由診療や臨床研究として行われている幹細胞治療の中にも、将来的に厳しい治験を乗り越え、保険適用となることが期待されているものが数多くあります。その筆頭が、iPS細胞を用いた再生医療です。すでに、目の難病である加齢黄斑変性や、脳の神経細胞が失われるパーキンソン病、事故で脊髄が麻痺してしまう脊髄損傷、重症の心不全など、これまで根本的な治療法がなかった疾患に対して、iPS細胞から作った目的の細胞を移植する治験が、日本のトップレベルの研究機関で進められています。これらの治験で有効性と安全性が証明されれば、数年後には保険適用の治療として、多くの患者さんに届けられる日が来るかもしれません。また、iPS細胞だけでなく、体性幹細胞を用いた治療法の開発も活発です。例えば、脳梗塞でダメージを受けた神経機能を回復させるために、骨髄由来の間葉系幹細胞を用いた治療は、すでに日本で「条件付き・期限付き承認」という再生医療特有の早期承認制度のもとで製品化され、保険適用となっています。これは、有効性が推定され、安全性が確認されれば、期限付きで承認し、市販後に改めて有効性を検証するという制度で、一刻も早い治療法を待つ患者さんのために設けられました。その他にも、肝硬変やクローン病、歯周組織の再生など、様々な分野で幹細胞を用いた治療法の治験が行われており、その成果が待たれます。未来の医療は、今日の地道な研究開発の先にあり、保険適用というゴールを目指して、多くの研究者が挑戦を続けているのです。